研究概要 |
Dystrophin結合蛋白の中核であるdystroglycan複合体は様々な細胞の表面膜に発現し、発生の初期には基底膜形成の中核となり,その後は基底膜と細胞内骨格をつなぎとめる強固な架橋構造として維持される.ここには複雑な信号伝達系が関与するものと推定されている.さて,これを別の角度から見ると、生理的状態としての細胞の発生ならびに病的状態としての癌細胞の転移・侵潤などの過程にはこの架橋構造を特異的にしかも効率良く破壊するメカニズムが存在するはずである.我々は(1)β-dystroglycanの細胞外ドメインがマトリックスメタロプロテアーゼによる分解を受けること、(2)これが上記のメカニズムのみでなくα-dystroglycanの分泌機構の候補でもあることを見い出した.さてsarcoglycan欠損症の筋細胞ではsarcoglycan複合体が欠損しdystroglycan複合体は裸に露出している.またsarcoglycan欠損筋ではdystroglycan複合体が分解していることが示唆されている.今回の結果に基づき,我々はsarcoglycan欠損筋においてマトリックスメタロプロテアーゼがdystroglycan複合体を分解することにより筋細胞死を誘発するという仮説を提唱,今後検討予定である.
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