研究概要 |
3年間の集約として、最終年度は組織切片上(in situ)における微量蛋白質を標的とした新しい技術の開発を更に進めた。(1)in situ phage screening(ISPS)法に関しては、レーザーマイクロダイセクション技術により、ヒト凍結筋肉から作成した約5,000平方ミクロン切片中に存在する微量抗原を認識するscFVファージを解析し、アクチン、ミオシン、トロポミオシンα、およびαアクチニン2といった、筋肉における高発現蛋白質抗原に対する特異的scFVファージ抗体を同定した。本抗体群の特異性に関しては、筋発現ライブラリーのイムノスクリーニング、2Dゲルから切り出した抗原のマススペクトロメトリー解析によって確認された。(2)質量分析計(MALDI-TOF-MS/MS)を応用し、レーザーマイクロダイセクションシステムと組み合わせた新しい微量分析法の開発に関しては、上記のISPS法と感度的に同じオーダーであることが判明した。(3)本年度は、新たにWestern blot法を組織上の微量構造物の解析に応用することを試みた(in site Western blot)。レーザーマイクロダイセクション技術により、神経変性疾患の一型であるPick病から単離集積した、ナノグラムオーダーのPick小体を高感度のWestern blot系により解析した結果、従来知られていなかったPick小体特異的な異常リン酸化tauの集積を確認した(論文投稿中)。従来より、臓器特異的沈着物が種々の疾患の成因に深く関わっていることが判明しており、現在これらの方法論を応用し、各種疾患特異的な沈着物質の単離同定を試みている。
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