研究概要 |
Diazoxideの心筋保護作用機構を検討するために、これまで共焦点レーザー顕微鏡を用いて、ラット心室筋細胞においてDiazoxideがミトコンドリア(Mito)のpermeability transition pore (mPTP)を介する[Ca^<2+>]放出を引き起こすことを示した。また、rhod-2/AMを負荷してsaponinで細胞膜をpermeabilizeして[Ca^<2+>]_mを測定することによりMito内のCa^<2+>濃度([Ca^<2+>]_m)の測定法を確立し、Diazoxide(1,10,50μM)が濃度依存性に[Ca^<2+>]_mを減少させることを示した。これらの結果から、Diazoxideは、PTPを介したCa^<2+>放出により[Ca^<2+>]_mを減少させて細胞保護効果を起こすことを明らかにした。今回は、虚血類似状態として高濃度のFCCP作用時における膜電位(ΔΨm)と[Ca^<2+>]_mの関連を検討した。FCCPによりΔΨmは完全にcollapseしたが、[Ca^<2+>]_mはcontrolの44%に低下したのみであったことより、Δψm減少によりCa^<2+> uniporterを介したCa^<2+>流入が減少すること以外の機序が考えられた。mPTPの阻害剤であるcyclosporin Aにより[Ca^<2+>]_mがより低下したことより、mPTPを介してCa^<2+>がMito内へ流入することが示された。一方、細胞質のNa^+濃度を低下させてMitoの主なCa^<2+>排出機構であるNa^+/Ca^<2+>交換機構を抑制すると、[Ca^<2+>]_mが増加した。以上より、虚血類似状態での[Ca^<2+>]_mの調節には、mPTPとNa^+/Ca^<2+>交換機構が関与していることが示唆された。虚血・再灌流心筋障害に対する治療戦略としてmPTPやMitoのNa^+/Ca^<2+>交換機構に作用する薬剤の開発の必要性が示唆された。
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