研究課題/領域番号 |
12470153
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
循環器内科学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
増山 理 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70273670)
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研究分担者 |
葛谷 恒彦 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (80150340)
多田 道彦 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90093434)
堀 正二 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20124779)
高島 成二 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
佐藤 秀幸 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70167435)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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キーワード | アデノシン / ecto-5'-nucleotidase / PKC / KATPチャネル / P70S6キナーゼ / P38MAPK / プレコンディショニング |
研究概要 |
我々はアデノシン産生酵素であるecto-5'-nucleotidaseを過剰発現させたマウスの作成に成功した。in vivoの系にて冠動脈を30分虚血・2時間再灌流した後に心筋梗塞サイズを測定したところ、コントロール群の49%に比べ、24%と著明に心筋梗塞サイズが縮小した。虚血刺激でecto-5'-nucleotidaseはすばやく活性化され、アデノシン産生が増加していた。またこれを用いて虚血再灌流に伴う遺伝子発現の変化をcDNAマイクロアレイにて評価した。虚血時に産生されるアデノシンは虚血に対して保護的に作用していることが示された。 健常ビーグル犬のプレコンディショニングモデルでは90分虚血・6時間再灌流に伴う心筋梗塞サイズが著明に縮小し、それらがPKC阻害剤・ecto-5'-nucleotidase阻害剤・アデノシンAl受容体阻害剤・P38MAPK阻害剤で完全に消失、あるいは細胞膜/ミトコンドリアKATPチャネル阻害剤で各々部分的に消失することを見出した。これらは虚血再灌流で確かに活性化される為、プレコンディショニングの心筋保護メカニズムにこれらの因子が重要な役割を担っていることが判明した。また48時間後に発生するセカンドウィンドウに関してp70S6Kを阻害すると、その効果が消失することも見出した。よって、狭義のプレコンディショニングとは異なる経路を介して心筋保護効果を発現していることが見出された。次に、健常ビーグル犬の心筋組織より採取したmRNAから犬遺伝子ライブラリーを作成し、10000種類のメッセンジャー解析が同時に出来る犬cDNAアレイシステムを構築中で、その前段階として約100種類の既知メッセンジャーRNAが一度に解析できるcDNAアレイ試作品の開発に成功した為、麻酔開胸犬にて3時間の選択的冠動脈低灌流モデルから得られた虚血部心筋組織と非虚血部心筋組織の遺伝子発現を比較し、そのうち約15種類の遺伝子に有意な増減が見られた。 臨床的検討においては、我々は(アデノシンに体内ですばやく代謝される)ATP製剤、及びKATPチャネル開口剤・ヒトANP製剤をそれぞれ心筋梗塞症例の超急性期に投与する多施設臨床試験(前者:COATスタディー、後者:J-WINDスタディー)、あるいはアデノシン再取り込み阻害剤ジピリダモールを軽度症候性の慢性心不全症例に継続投与して左心機能予後、運動耐容能予後、生命予後を検討する多施設臨床試験(ROADスタディー)を、各施設倫理委員会の承認の下に開始した。COATスタディーでは約40例のエントリーにて心筋梗塞発症1年後の左心機能予後が有意に改善している事が確認された。ROADスタディーでは現在5名が1年の経過観察を終了し、実薬群でいずれも運動耐容能の増大と血漿BNP値の低下および血中アルドステロン値の低下を認め、さらに試験を進行中である。
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