研究概要 |
1.血管における酸化ストレス産生酵素・消去系酵素の動脈硬化に伴う発現の変化 a)剖検摘出冠動脈標本を用い、酸化ストレス消去系酵素であるCu/Zn SOD,cytosolic glutathione peroxidase(GPx)-1,およびthioredoxin/glutaredoxin(TRX/GRX)の発現を、免疫染色法にて検討した。明らかな動脈硬化病変を有さない冠動脈では、Cu/Zn SOD,TRX/GRXは主として平滑筋細胞に、GPxは主として内皮細胞に発現していた。動脈硬化病変を有す冠動脈では、GPxおよびTRX/GRXの発現が増大しており、さらに浸潤した炎症細胞において強い発現が見られた。これに対し、Cu/Zn SODの発現の変化はなかった。 b)狭心症患者の冠動脈DCA標本を用い、冠動脈粥腫病変における、NADH oxidaseの必須コンポーネントであるp22phoxの発現を免疫染色法で、O2-の局所産生をdihydroethidiumで検討した。粥腫局所におけるO2-産生が認められ、その産生はhypercellular lesionにてfibrous lesionより強かった。そして、O2-の産生部位はp22phox発現部位と一致していた。 以上の所見は動脈硬化の発症、進展に伴い酸化ストレス産生酵素ならびに消去系酵素の局所での発現が変化し、動脈硬化の病態を修飾していることを示唆する。 2.内皮型NO合成酵素の過剰発現マウス(eNOS-Tg)と、apoE欠損マウス(apo E-/-)を用いた交配実験 apoE-/-の野生型と比べ、eNOS-Tg/apoE-/-では動脈硬化病変が増強する結果を得た。 この原因として酸化ストレスの増加が考えられ、現在その機序を検討中である。
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