研究概要 |
高血圧動物由来あるいはバルーン傷害時やIL-1β刺激下の血管平滑筋細胞(VSMC)では、C/EBPの主要な3つのメンバーα,β,δのうちC/EBPδが過剰に発現誘導さることにより、PDGF受容体をはじめとする様々な増殖因子(IL-6,COX-2,iNOS,leptin,TNFαなど)の遺伝子転写活性が促進されものと考えられる。これらの成績から、動脈硬化をはじめとする血管壁リモデリングの発症・進展にC/EBPδ遺伝子発現が深く関与することをin vitroの系で明らかにしてきた。従って、in vitroあるいはex vivoの成績をさらにin vivoの系で展開してゆくために、血管平滑筋特異的プロモータを利用したC/EBPδトランスジェニック(Tg)動物を作製し、その形態学的・機能的解析を行うことによって、高血圧や動脈硬化における血管リモデリングの分子メカニズムとの関連性を明らかにすることが可能である。平滑筋特異的なSMα-アクチンプロモータの下流にラットC/EBPδ cDNAを結合したtransgeneを作製し、6系統のC/EBPδトランスジェニック(Tg)ラットを樹立した。その中で、C/EBPδ mRNA発現量が最も多い1系統について、野生型あるいはnon-Tgラットと比較することで形態的あるいは機能的な解析を進めている。このTgラットにおけるC/EBPδ mRNA発現分布をみると、大動脈平滑筋層に著明なC/EBPδ発現を認めたが、その他の組織(腎、肺、心、肝など)ではほとんどその発現を認めず、このラットは血管平滑筋特異的C/EBPδ過剰発現モデルであることが確認された。今後は、この動物を用いてバルーン傷害後やアンジオテンシンIIをはじめとする循環調節物質に対する血管壁の形態的あるいは機能的変化を検討し、血管壁リモデリングにおけるC/EBPδの病態生理学的役割を明らかにしてゆく予定である。
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