サイトカイン、アンジオテンシン受容体のクロストーク機構と血管病変における意義

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12470156
• 研究機関: 愛媛大学
• 研究代表者: 堀内 正嗣 愛媛大学, 医学部, 教授 (40150338)
• 研究分担者: 岩井 將 愛媛大学, 医学部, 助教授 (00184854) ; 日和田 邦男 愛媛大学, 医学部, 教授 (00108391)
• キーワード: アンジオテンシン / 受容体 / 血管リモデリング / サイトカイン / 転写調節因子 / 遺伝子改変マウス / 血管炎症 / IRF-1

研究概要

アンジオテンシンIIの作用は、主としてアンジオテンシンIIタイプ1受容体(AT1受容体)を介するものと理解されてきたが、最近、申請者の堀内等が新しくクローンしたアンジオテンシンIIタイプ2受容体(AT2受容体)が、血管障害、心筋梗塞後の心血管リモデリング等に特異的に発現することが知られてくるに従い、AT1受容体に比べ、むしろAT2受容体の方がこれら病態にとって重要であると考えられるようになり、その病態生理学的意義の解明が急がれている。そこでAT2受容体の発現調節機構の解明が重要課題となるが、我々はAT2受容体発現にサイトカインによって産生される転写調節因子Interferon Regulatory Factor-1(IRF-1)が、深く関与している事を報告してきた。そこで我々は、血管病変に伴い特異的に発現されるAT2受容体が、転写調節因子IRF-1を介していること、AT2受容体が血管リモデリングに重要な役割を担っているという仮説を証明するため実験を行ってきたが、R3T3細胞、培養血管平滑筋細胞を用いて、IRF-1の産生に関与するサイトカインの一つであるIFN-γが、AT2受容体発現増加に関与していることを報告した。従来、マウスに血管傷害モデルを作成することは困難であったが、研究代表者等はマウス大腿動脈にポリエチレンチューブをカフとして巻き付けることにより、マウスでも再現性の高い内膜肥厚が得られる血管傷害モデルを作成するのに成功し、このモデルで種々のサイトカインが産生され、AT2受容体が特異的に上昇していること、更にAT2受容体遺伝子欠損マウスでは、血管炎症による新生内膜肥厚が野生型マウスに比べ増加していることを明らかとした。現在、IRF-1遺伝子欠損マウスでは、血管傷害による新生内膜肥厚が増加しているとの前段階的実験結果を得ている。

研究成果

• [文献書誌] Akishita,M.,Horiuchi,M.,Yamada,H.,Zhang,L.,Shirakami,G.,Tamura,K.,Ouchi,Y.and Dzau,V.J: "Inflammation Influences Vascular Remoderlng through AT2 Receptor Expression and Signaling."Physiol.Genomics.. 2. 13-30 (2000)
• [文献書誌] Horiuchi,M.,Hayashida.W.,Akishita,M.,Yamada,S.,Lehtonen,J,Y,A.,Tamura,K.,Daviet,L.,Y,E,Chen.,Hamai,M.,T.X,Cui.,Iwai,M.and Minokoshi,Y.: "Interferon-γ Induced AT2 Receptor Expression in Fibroblasts by Jak/STAT Pathway and Interferon Regulatory Facotor-1."Circ.Res.. 86. 233-240 (2000)
• [文献書誌] Akishita,M.,Iwai,M.,Lan,W.,Zhang.L.,Ouchi,Y.,Dzau,V.J.and Horiuchi,M.: "Inhibitory Effect of AT2 Receptor on Coronary Arterial Remodeling After aortic, Banding in Mice."Circulation. 102. 1684-1689 (2000)
• [文献書誌] Akishita,M.,Shirakami,G.,Iwai,M.,Lan,W.,Aoki,M.,Zhang,L.,Toba,K.,and Horiuchi,M.: "Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitor Restrains Inflammation Induced Vascular Injury in Mice."J.Hypertens. (in press). (2000)