研究概要 |
高血圧、高脂血症等に伴う動脈硬化、糖尿病に伴う血管病変、血管傷害に伴うリモデリングのメカニズムなどの解明は、多くの成人病に伴う種々の臓器障害の予防、治療のうえで重要な課題であり、レニンーアンジオテンシン系がこれらの病態に、密接に関与していることはよく知られている。AT1a受容体欠損マウス、AT2受容体欠損マウス、野生型マウス大腿動脈に血管傷害モデルを作成し、AT2受容体による血管リモデリングへの影響を検討したところ、血管傷害に伴いAT1受容体とともに野生型マウスではAT2受容体が特異的に上昇しているおり、AT2受容体欠損マウスでは野生型マウスに比べ、血管平滑筋におけるDNA合成能低下、アポトーシス低下、内膜肥厚増強が観察された。傷害血管におけるケモカインMCP-1,TNF-α,IL-6,IL-1βなどの炎症性サイトカインの産生白血球、マクロフアージの浸潤は、AT2受容体遺伝子欠損マウスで亢進しており、AT2受容体は抗炎症作用を有する事が示された。AT1a受容体欠損マウスでは、逆の変化が認められた。DCAにより得られた、ヒト冠動脈硬化病変では、AT1受容体は主として、血管平滑筋細胞に発現しており、一方、AT2受容体は血管平滑筋細胞の他、線維芽細胞、マクロファージにも発現が認められ、ヒト血管病変形成にもAT2受容体が重要な役割を担っていることが示唆された。次に、R3T3細胞、培養血管平滑筋細胞を用いて、IRF-1の産生に関与する、サイトカインのひとつであるIFN-γが、AT2受容体発現増加に関与していることを見いだした。そこで、一連の炎症反応が引き金となり、IRF-1が産生され、AT2受容体が、血管傷害において、高発現するという仮説を証明するため、IRF-1欠損マウスを用いて検討したところ、IRF-1欠損マウスでは、傷害血管におけるAT2受容体の発現の低下、新生内膜形成、血管平滑筋の増殖抑制、血管平滑筋のアポトーシスが低下していた。
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