研究概要 |
11q23転座は急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群でみられ、特に乳児ALLでは予後不良である。11q23領域からMLL/ALL-1/HRX遺伝子が単離され、このMLL遺伝子を用いてこれまでにAF-5α、CBP,p300,ABI-1,AF17q25,AF5q31遺伝子を単離し、今年度はさらにt(10;11)(q22;q23)の10q22領域よりMLLの新規転座相手遺伝子の単離を行った。t(10;11)(q22;q23)は急性骨髄性白血病(AML)のM4、M5に見られる比較的稀な染色体転座である。この転座を有するAML(M2)with trilineage dysplasiaからMLLの新規相手遺伝子を単離した。cDNA panhandle PCR法により36bpのMLLエクソン5に102bpの未知の塩基配列が融合した転写産物を検出した。患者白血病細胞における融合転写産物の発現をRT-PCR法で確認したところ、異なる2種類の転写産物が認められ、それぞれMLLエクソン5及び6と新規遺伝子が融合していた。ノーザンブロット解析では3種類の異なるサイズの転写産物を認め、このうち約7.5kbの転写産物が、発現していたすべての組織に共通のもので、成人の骨格筋、胸腺、卵巣及び胎児の心臓、肝臓、脳に強く発現していた。各種cDNA libraryをスクリーニングし、これまでに約3.7kbのOpen Reading Frameを含む約8kbの塩基配列を決定した。新規遺伝子は核移行シグナルを有するが、他のMLL転座相手遺伝子との相同性は認められなかった。現在、全塩基配列の同定中であり、さらに全長のキメラ遺伝子を作成してその白血病化能について検討を進めている。
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