研究概要 |
1.腸管凝集付着性大腸菌(EAEC)の腸管粘膜付着関連遺伝子のクローニングと解析 EAECの病原プラスミド上の新規遺伝子群AatPABCD(aat cluster)のクローニングと解析を行った。AatCは,膜輸送蛋白であるABCトランスポーターのATP結合蛋白ときわめて近い相同性があった。リコンビナント蛋白から作成した特異的抗体を用いた検討で,AatAは外膜上に発現していた。AatA遺伝子ノックアウト株では,培養上清および外膜表面上への凝集抑制因子Aapの分泌が減少していた。AatP, B, C, D遺伝子それぞれのノックアウト株でも,同様であった。これらの遺伝子欠損株にaat cluster遺伝子を再導入することで,減少していたAapの分泌は回復した。以上よりaat clusterは,Aap分泌を促進する新たなABCトランスポーター複合体であることが明らかになり,大腸菌の付着機構の解明に重要な知見となった。 2.下痢原性大腸菌の疫学的検討 本地方およびモンゴルでの下痢症患児由来から分離された大腸菌の病原因子をPCR法と付着試験で検討した。EHECとならんでEAECの病原因子の検出頻度が高いことが明らかになった。 3.定量的バイオフィルム試験によるEAECのスクリーニング法の開発 マイクロプレート上で大腸菌を培養し,形成されたバイオフィルムを吸光度計で定量的に測定する方法が,EAECのスクリーニングに有効であることを明らかにした。
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