研究概要 |
1.腸管凝集付着性大腸菌(EAEC)の外膜輸送蛋白AatAの構造・機能解析 我々がクローニングしたEAEC病原プラスミド上の新規外膜輸送蛋白AatAは,バイオフィルム抑制因子Aapを分泌する。AatAのC末端側のさまざまな変異体を作成し,発現ベクターに組込みその機能変化を観察した。その結果,C末端から10〜12番目のアミノ酸がAap分泌に重要であることが明らかになった。また英国ケンブリッジ大学Luisi教授との共同研究により,AatAは大腸菌外膜輸送蛋白TolCのホモログであることが明らかになった。 2.定量的バイオフィルム試験による下痢原性大腸菌の疫学的検討 我々が開発した定量的バイオフィルム試験を用いて,下痢症患者由来の大腸菌1042株のバイオフィルム形成能を調べ,48株のEAECを効率良く検出できた。検出株の遺伝子解析によりEAECのheterogeneityが明らかになり,未知の線毛遺伝子の存在が推測された。 3.大腸菌外膜輸送蛋白TolCとバイオフィルム形成との関連 腸管出血性大腸菌も保有する大腸菌外膜輸送蛋白TolC遺伝子を,EAECにおいてノックアウトすると,バイオフィルム形成が低下することを明らかにした。ノックアウト株にTolC遺伝子を導入することでバイオフィルム形成能は回復したため,TolCがバイオフィルム形成を促進していることが判明した。
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