研究概要 |
自閉症集団の候補遺伝子解析をDHPLCおよび、直接塩基配列決定法により行い、以下の結果を得た。 1.EXT1,EXT2遣伝子解析:EXT遺伝子は、多発性外骨腫を呈する遣伝性疾患の原因遣伝子として同定され、癌抑制遺伝子の一つとして関心を集めている。脳にも広く発現しているが、脳に於ける機能はまだ不明である。多発性外骨腫を呈し、さらに、自閉症・知的障害を呈する2家系において、EXT1遺伝子の変異を同定した。2変異ともに、新たなdeletion変異であり、これにより、EXT1遺伝子発現の低下が示唆された。脳における発現局在の検討では広く発現が確認され、脳機能におけるEXT1の関与が示唆された(J Hum Genetics in press 2002)この成果は、EXT遺伝子の脳に於ける新たな機能を示唆すると同時に、結節性硬化症と同じく、癌抑制遺伝子の障害が自閉的認知機能の障害に関与することを示唆した点で重要な成果である。今後、EXT遺伝子群の発達期脳における発現局在、きのうの解析を進める。 2.FOXP2遺伝子解析:読字障害の家系における最初の原因遺伝子として同定され、7q31における遺伝子として注目されているforkhead familyの一つであるFOXP2遺伝子の解析を行った。日本人特有の新たな遺伝子多型を同定した。多型の同定のみで、53の自閉症例には、有意な変異は同定しなかった。1例においてミスセンス変異を同定し、疾患との関係は、今後の多数解析により検討される。 3.MBD遣伝子群の解析:MECP2、MBD1,2,3の遣伝子群に関して53例において解析した。MBD1にcoding regionにミスセンス変異を同定した。同胞における解析を進めている。疾患関連遺伝子変異であることが同定されれば、MBD遺伝子群における最初の疾患関連変異であり、自閉症とサイレンシング遺伝子の関係をさらに示唆する。 4.311のマーカーを使用した全ゲノム解析:whole genome linkage analysisを同胞家系例に関して行っている。現時点では有意な連鎖を示す染色体部位は同定されていない。 以上、多数の候補遺伝子における全塩基配列の解析を施行し、自閉症関連遺伝子変異を同定し、さらに、解析が進められている。
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