自閉性障害の原因遺伝子同定を目的として、機能的候補遺伝子、染色体7q31局在遺伝子に関して、変異解析を行った。対象遺伝子は、機能的候補遺伝子とsちえ、脳内遺伝子発現制御機構に関与する遺伝子群、情報伝達系遺伝子群を中心に網羅的に解析した。染色体座位特異的遺伝子群については、7q31-34領域の中で、脳内発現が推定される遺伝子群を選択した。研究は、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する指針」に沿って立案され、自治医科大学倫理委員会の承認を得て行われた。候補遺伝子群の全exonについて、DHPLC法でheteroduplexを検出する方法と直接塩基配列決定法により変異を検出した。遺伝子メチル化部位結合蛋白遺伝子群では、MDB1に、expn9にC805Tのミスセンス変異が同定された。WNT遺伝子ファミリーの一つにミスセンス変異、7q31局在の遺伝子Aにミスセンス変異、多発性外骨腫の2例にEXT1遺伝子にflameshiftを生じるdeletionとミスセンス変異が同定された。変異が同定された者はいずれも男児であり、父親に同一の変異が同定される例が多かった。これらは、自閉症は、単一遺伝子病でありうる。しかし、原因遺伝子は多数である。男児に検出されることが多いことは、臨床所見とも呼応するが、父親に同一の変異が検出される例が多いことは、常染色体優性遺伝する遺伝子変異によることを、示唆している。メチル化部位結合蛋白遺伝子の一つに変異が同定されたことは、Rett障害と類似の分子機構が自閉症一般にある可能性を示唆した。 WNT遺伝子群は脳の発生に関与すると考えられ、脳形成過程から異常が存在することが示唆された。
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