研究概要 |
平成12年度における主たる成果は以下の通りである. 1.特発性低身長患者におけるSHOX遺伝子異常頻度の検討 われわれは,ドイツハイデルベルグ大学のグループとの共同研究により,900例の特発性低身長患者(日本人650例,ヨーロッパ人250例)において,SHOX遺伝子解析を行った.その結果,SHOX遺伝子内変異を検討した750例中3例,また,SHOX欠失を検討した150例中3例において,SHOX遺伝子異常が同定された.したがって,特発性低身長患者におけるSHOX遺伝子異常の頻度は,約2.4%と推測された. 2.SHOX遺伝子異常症を有する患者における臨床像の検討 われわれは,SHOX欠失が確認されたX染色体短腕部分欠失を有する43例を日本中から集積し,遺伝子型-表現型解析を検討した.その結果,(1)SHOX変異が,低身長のみならず,四肢および頭頚部のターナー骨格徴候を招くこと,(2)四肢のターナー骨格徴候が性腺機能を保持している患者優位に認められ,したがって,エストロゲンの骨成熟効果が四肢骨格徴候の増悪因子として作用すること,(3)頭頚部のターナー骨格徴候がリンパ管閉塞症状を有する患者優位に認められ,したがって,リンパ浮腫による骨圧迫効果が頭頚部骨格徴候の増悪因子として作用すること,を見いだした. 3.SHOX過剰と性腺異形成を有する患者における成長パターンの検討 われわれは,既に,SHOX欠失と正常性腺機能を有する患者が思春期から明瞭となる成長障害を呈することを報告している.今回,逆の組み合わせであるSHOX過剰と性腺異形成を有する患者が,思春期相当年齢から明瞭となる高身長を伴うことを世界で初めて見いだした.したがって,SHOX遺伝子の量効果が,性腺機能に依存することが確認された.
|