研究概要 |
眼や精巣は免疫特権臓器(immune priviledge site免疫反応がおこりにくい臓器)であるが、そのメカニズムとして、これらの臓器がFas Lを発現し、Fas +活性化リンパ球をアポトーシスにおちいらせることが報告されている。皮膚は免疫特権臓器ではないが、今回レチノイド投与により、皮膚線維芽細胞にFas Lが発現することにより、免疫特権臓器となる可能性があることを報告した。 すなわち培養線維芽細胞にレチノイドを投与することにより、mRNAレベル、タンパクレベルでFas Lが誘導されることを証明した。これはケラチノサイト、ランゲルハンス細胞などではおこらず、他のagent,ステロイドやVit D3,各種サイトカインでもみられなかった。次にこのFas Lが機能をもつことを細胞障害アッセイにより確認し、これが抗Fas L抗体で阻害されることで、このキラー活性がFas Lによることを証明した。in vivoでは、皮膚移植の系を用いてレチノイドが異系皮膚移植の拒絶を延長することをみいだした。この延長がFas L抗体で阻害されること、またFas Lのmutant(gld/gld)を用いてこのマウス皮膚をdonorとして用いると、レチノイドによる拒絶反応の延長がみられないことから、in vivoでもレチノイドによりFas Lが誘導され、皮膚が免疫特権臓器となりうることをみいだした。 レチノイドは乾癬治療にすでに有効とされているが、そのメカニズムとして線維芽細胞にFas Lを誘導することにより皮膚が免疫特権臓器となることが示唆された。 またGene gunやScratchingでその周囲のケラチノサイトが実際にinjuryを受けていないにもかかわらずアポトーシスをおこすことをみいだした。これがp53,Fas依存性の反応であることを報告した。これは皮膚疾患でよくみられるケブネル現象の成因である可能性を示唆するものである。
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