研究概要 |
今や国民病ともいえるアトピー性皮膚炎(AD)では皮膚バリアー機能障害、IgE抗体の過剰産生などの免疫異常に加えストレスや発汗異常などの神経内分泌的な調節異常がその発症、伸展に大きな関与をしている可能性が報告されている。我々はストレス刺激などにより神経終末より遊離されるサブスタンスPが皮膚表皮ケラチノサイト、線維芽細胞からも産生されることを見いだしたことより、ADにおけるストレスとTh2リンパ球性のアレルギー炎症との関係を明らかにするため、皮膚線維芽細胞を培養し、IL-4,サブスタンスP、ヒスタミン等を刺激による、エオタキシンの誘導と産生機構に関して解析した。 [平成12年度]上記の細胞におけるエオタキシン産生をELISAにて解析した結果、IL-4,サブスタンスP、ヒスタミンのそれぞれ単独刺激後、有意なエオタキシン産生が見られた。IL-4にサブスタンスP、ヒスタミンを添加する事により相乗的なエオタキシン産生の増強とエオタキシンmRNA発現の増幅を認めた。IL-4の受容体の変化をRT-PCR、FACSにて解析した結果、サブスタンスP、ヒスタミンによるエオタキシンmRNA発現の増強に伴い、IL-4の受容体の増強も認められ、これらの刺激は線維芽細胞のIL-4受容体の発現を増強することによりIL-4依存性のエオタキシン産生を増強すると考えられた。 [平成13年度]初代培養と継代5のAD患者由来の線維芽細胞はIL-4単独刺激ではエオタキシン産生は健常人との差は認められなかったが、IL4にサブスタンスPとヒスタミンを加えるとエオタキシン産生は健常人由来の線維芽細胞より有意に増強し、継代9の細胞まで高反応性が認められた。IL4受容体の発現をFACSで検討した結果、健常人に比AD患者由来の線維芽細胞ではサブスタンスPとヒスタミンの刺激によりIL4受容体の発現が増強する傾向が認められた。これらの結果よりADでは皮膚構成細胞レベルにおいてもTh2細胞へシフトしやすい環境が存在すると考えられた。
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