研究概要 |
放射線に対する細胞応答の中で、上流分子群(P53,SAPK/JNK)の果たす役割や新規誘導タンパクP41がどのように放射線誘発細胞死に関与しているかを解明することを目的とし、照射後、すみやかに細胞死を示すヒトリンパ性白血病細胞株MOLT-4細胞を用い、P53,SAPK/JNKの活性化や細胞死に関与する遺伝子の発現解析、核変成の経時的変化などについて検討した。 X線で照射後、SAPK/JNKの持続的な強い活性化とCaspase/CADの活性化を伴い急速なviabilityの低下と細胞死を呈すが、典型的なDNA ladderは示さない。P53はwildtypeとされ、P21WAF1とともに照射後増加する。 1.viabilityの低下が酸性スフィンゴミエリナーゼ阻害剤(D609)によって抑制された(P53,WAF-1誘導を阻害することなしに)。このことからMOLT4細胞死の誘導には一過性ではなく持続的で高いSAPK/JNK活性化を伴うP53非依存性セラミド経路も重要であると考えられた。 2.SAPK/JNKのdownstream target分子の解析の結果、HSP27のリン酸化によるCaspase活性化の阻害とc-Myc発現の低下を伴っていることが判明した。 3.ミトコンドリアからのチトクロームc流出を伴っていることがミトコンドリアの細胞分画とチトクロームC抗体染色により、又、ミトコンドリアトラッカーによる膜電位低下も確認された。 4.放射線誘発細胞死シグナル伝達におけるP53経路に関して、Bax, PIG3,Noxa, PUMAについて、Westernブロッティング、RT-PCR等を用いて解析した結果、Noxaの可能性が示唆された。 5.DNA fragmentation,核変性実験、CAD/ICADの発現やCaspase活性に異常はなく、Caspase阻害剤によってDNA fragmentationは抑制された。 6.P41に関しては、特異的抗体の作製を終了したが、細胞における動態解析やP41-cDNAのtransfection実験については継続中。
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