研究概要 |
慢性的脳血流量低下によって生ずる老年性痴呆の分子的発症機構の解明を目ざしてモデル動物としての両側総頚動脈永久結紮(2VO)ラットの脳中での遺伝子発現変化を検討し、これまでに幾つかの因子の単離・同定を行なった。本研究ではそのうちで、新規かつ発現変化の著しい2つの因子について、その機能解析を目指した研究を行なった。2VO処置後4日時点で増大する因子vof-21および2VO処置4カ月時点で増大している因子vof-16は、現在までにそれぞれ1,600bpおよび780bpの配列を明らかにした。しかし何れも、蛋白をコードする部分の全配列の解明には至っていない。また両配列とも現在まで、いずれの既知配列とも有意な相同性は得られていない。vof-21について、その発現の時間経過を半定量的PCR法に基づき検討したところ、2VO処置後7日でピークとなり、14日で元のレベルにまで戻った。両因子の生理機能を解明するために、この因子を内在する細胞系の検討を行ないその結果両因子ともNG108-15細胞中に存在することをPCR法により確認した。そこで、細胞中の発現量を制御する目的で、S-oligo antisense DNAの細胞内導入を行なうこととし、その効率的な導入法を検討し、pH感受性のリポソームを用いることが有効であることを見い出した。現在その方法を用いて、細胞内イオン動態やpHの変化を中心とした生理機能の解明、さらに因子の脳内存在部位の詳細な解明を行なっている。また、引き続き蛋白翻訳部位の全配列の解明を目指した解析も継続している。
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