研究概要 |
慢性脳血流低下によって生ずる老年性痴呆の分子発症機構の解明をめざして、モデル動物としての両側総頸動脈永久結紮(2VO)ラットの脳中での遺伝子発現変化を検討し、昨年まで2VO4日後と4ヶ月後に著しく発現量が増大する因子としてvof-21とvof-16をそれぞれ単離し、その部分配列と発現の時間的経過等について検討した。本年度はその全長等を明らかにした。Vof-21は、ノーザンブロット解析より全長が約4.5kbpであるものと推定されたため、その長さを目的として、5'RACE法ならびにライブラリーのPCR法を用いた検索によって、全配列4,885ntを明らかにした。転写部位は1089から1889で、265残基のアミノ酸に変換されると推定された。蛋白は膜貫通部位を1箇所有していた。また、その脳内分布をin situ hybridization法により検討し、全脳に広く分布するものの、青班核に特に多く、海馬や皮質にも多いことが見い出された。このことより、vof-21はノルアドレナリン神経系との関連性が想像された。Vof-16についても同様に検討し、ノーザンブロットで2.1kbpにバンドを検出、全長解析を行なって2098ntの配列を明らかにした。翻訳部位は212から434であり、73残基の膜貫通部位1箇所の蛋白が推定されたが、vof-16については、その全長はさらに長い可能性も否定できない。、Vof-16については既に組織分布を明らかにしているが、液性部分と脳の実質部分との境になる領域に分布が多いことより、ポンプ/トランスポーターあるいは脳関門との関連性を考えている。
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