研究概要 |
1)メラトニンはその受容体を介して生体時計の位相を変化させ、概日リズム周期の安定化に寄与している。メラトニン受容体遺伝子から複数のミスセンス多型を検出した。1a受容体のR54W多型は非24時間睡眠覚醒症候群(N-24)に多く、受容体の発現量・メラトニンとの親和性を変化させた(発表済み)。また、G蛋白キメラcDNA(慶應大学西本教授より提供)を使い、R54W多型を持つ受容体はGq蛋白との結合性が弱まり、Gi蛋白との結合がやや強化することも見出した。 2)ショウジョウバエの時計遺伝子Perのヒトホモログの一つであるPer3遺伝子から6個のミスセンス多型を含む20個の多型を見出した。そのうち[G647,P864,4-repeat, T1037,R1158]の組み合わせ(ハプロタイプ)が睡眠相後退症候群発症(DSPS)の危険因子になっていた。 3)CLOCK遺伝子から複数のミスセンス多型を見出したほか、既に朝型・夜型生活パターンとの相関が報告されていたT3111C多型がDSPS発症に関与する可能性を指摘した。(報告済み) 4)ハムスターのリズム変異体の原因であるCasein Kinase I epsilon(CKIε)遺伝子の多型解析により、ミスセンス多型1個を含む4個の多型を見いだした。ミスセンス多型はコントロール群に比べ概日リズム障害群で有意に低頻度であり(P=0.013)、in vitroの実験では、野生型の酵素蛋白に比べ、酵素活性を約1.8倍に増加させること(大阪大学蛋白質研究所高野氏・礒島氏との共同研究)を見出した。従ってこのミスセンス多型は酵素活性の増加を介して、概日リズム障害の発症を抑制する働きを持つと考えられた(投稿準備中)。 以上のように概日リズム障害発症に関わる複数の遺伝子多型を検出し、機能解析を行った。今後もこれらの多型の組み合わせが疾患発症に至る過程を解析する予定である。
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