本研究課題"セラミド・バイオスタットシステム"の遺伝子解析と難治性白血病への治療応用"において以下のように研究しその結果を得たのでその概要を説明する。 (1)アポトーシス誘導時のセラミド増加の有無を種々のアポトーシス耐性白血病細胞と感受性細胞において生化学的に比較検討。 ---アポトーシス誘導に耐性となっているために抗ガン剤による化学療法が奏功しないと思われた急性骨髄性白血病患者もしくは慢性骨髄性白血病患者よりの白血病芽球においては細胞内セラミド量が抗ガン剤感受性の白血病細胞に比して有意に低下していることが判明した。 (2)アポトーシス耐性化によるセラミド量の低下の原因として、スフィンゴミエリナーゼによるセラミド産生、グルコシルセラミドおよびスフィンゴミエリン合成酵素によるセラミドの代謝機構の検討。 ---上記の薬剤耐性化した患者検体においてはセラミド産生に重要なスフィンゴミエリナーゼの活性は著明ではなかったが、セラミドを代謝してその細胞内量を減少させるグルコシルセラミドおよびスフィンゴミエリン合成酵素の活性は有意に上昇していた。 (3)アポトーシス耐性化によるセラミド代謝機構の亢進の生化学的および遺伝子レベルでの検討 ---現在、検討可能な遺伝子レベルの変化は、セラミド産生・代謝酵素群の中で唯一グルコシルセラミド合成酵素において可能である。従って、そのmRNAレベルの変化を患者検体で検討したところ、やはり活性の上昇に一致してそのレベルも多くの薬剤耐性患者検体において増加していた。 今後さらに、セラミド代謝酵素活性の遺伝子レベルでの制御およびセラミド代謝阻害剤によるアポトーシス耐性の克服の可能性、新規のセラミド代謝の阻害剤を既知の阻害剤の構造よりデザインしその有効性を難治性白血病患者の芽球にて検討する方向で研究を発展させたい。
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