研究概要 |
1)骨髄腫の前癌病変であるMGUS患者16例から御提供いただいた骨髄からCD138抗体ビーズを用いて形質細胞を分離し、免疫グロブリン遺伝子(IgH)座とCCND1,FGFR3,MUM1,MAFB座との染色体転座の有無をFISH法を用いて検討した。16例中9例(56%)にIgH座を含む転座を認めた。9例中6例(67%)は11q13(CCND1)との、1例は4p16(FGFR3)との転座であった。しかしMUM1,MAFBの転座は1例も認めなかった。t(11;14)を認めた6症例中4例では、骨髄クロット標本の免疫染色体でCyclinD1の核染色所見が認められ、MGUS発症にCyclinD1蛋白の異常発現が関与していることが明らかとなった。2)転座関連原癌遺伝子6種類(CCND1,FGFR3,c-MYC, MUM1. c-MAF, MAFB)についてLight Cyclerを用いた定量RT/RQ-PCR法を開発した。骨髄腫30症例における発現定量の結果、CCND1,FGFR3,c-MAF, MAFB遺伝子発現は転座を有し過剰発現を示す症例と全く発現を認めない症例に明確に分かれた。対照的にc-MYCとMUM1遺伝子は細胞株において極めて高発現を示したのに対して症例においては高い症例から低い症例まで連続的に分布した。30例中8例にCCND1、6例にFGFR3の異所性発現を認めた。CCND1陽性8例中3例でc-MYC、2例でMUM1の過剰発現を認めた。FGFR3陽性例中3例でc-MAFの異所性発現を認めた。また、c-MAFとc-MYCの過剰発現を認めた症例が2例あり内1例は原発性形質細胞性白血病でありもう1例は難治性骨髄腫例であった。すなわちCCND1^+MGUSはc-MYCやMUM1など増殖関連転写制御因子の異常発現を伴い多発性骨髄腫へと進展する。それに対してFGFR3^+MGUSはc-MAF活性化により難治性骨髄腫へと進展することが示唆された。
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