研究概要 |
(I)わが国における赤血球膜異常症のphenotypeとgenotypeの検索 平成12年度(第1年度)に引き続いて、本年度(第2年度)も、赤血球膜異常症31家系64症例の検索を施行した。その結果、新たに検索を行った膜異常症の内訳は遺伝性球状赤血球症(HS)13家系16症例、遺伝性楕円赤血球症(HE)2家系3症例、protein 4.2(P4.2)完全欠損症2家系2症例、遺伝性有口赤血球症1家系2症例と判明し、その他の症例は現在鋭意、解析中である。このうち、P4.2完全欠損症は2家系とも遺伝子解明の結果、P4.2遺伝子における点変異(142Ala→Thr)のhomozygote(いわゆるNippon type)と判明した。 以上の成績の結果、従来からの研究代表者らによる結果を合わせると、全検索自験症例数は、636家系1078症例となった。 (II)遺伝性球状赤血球症(HS)のgenotypeの解析成績 病因としての赤血球膜蛋白関連遺伝子変異としては、(1)band 3(B3)遺伝子(EPB3)変異は、frameshift変異3種、splicing変異1種、missense変異8種、計12種が同定でき、このうち、既報の2種を除いた10種が日本人に特有であった。(2)ankyrin(ANK)遺伝子(ANK1)では、frameshift変異9種、nonsense変異4種、splicing変種6種、計19種を同定したが、全て日本人に特有であった。(3)P4.2関連遺伝子(ELB42)では、missense変異を主体とした常染色体劣性遺伝形式をとる3種を同定した。 (III)赤血球膜蛋白質遺伝子とその蛋白質発現に関するgene methylationの意義 ヒト赤血球膜蛋白質とその関連遺伝子のうち、B3(EPB3), P4.2(ELB42), β-spectrin(SPTB)の3種を選び、そのgene methylationについて、各々の特性を検索した。その結果、SPTBには、多数のCpG siteがあり、メチル化は全く認められなかった。ELB42は、幼若培養樹立株(UT-7)赤芽株では、非メチル化されているのに対し、成熟赤芽株ではほぼメチル化されていた。EPB3は、sites EおよびGで特異なメチル化度の低下を認めた。
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