研究概要 |
無機リン酸(以下リン)は生体のエネルギー代謝、細胞膜の構成成分あるいは、カルシウムとともに骨格の形成など生体機能維持に必須のイオンである。しかしながらカルシウム代謝調節に関与する多くの分子の発見に比べて、リン代謝代謝系は全く明らかにされていない。最近、我々はリンの調節系を新規リン調節ホルモンやリン応答転写因子の存在を解明した。そこで、発見したリン代謝ホルモンファミリー(Phosphatonin,別名FGF23)の標的分子の同定を行った。マウスFGF23CDNAをpCD4ベクターを用いて、ウイルスベクターに連結後、昆虫細胞に感染させた。感染後、細胞培養液中に分泌された、FGF23をHPLC及び抗体カラムを用いて単一に分離同定した。次に、標的分子クローニングのため、ラベル化FGF23を用いて、腎尿細管細胞膜に結合する特性を調べた。この結果、FGF23の標的分子としてNa/Pi cotransporter (type IIC)を新しく同定した。この分子の機能や発現機構について検討し、新しいリン代謝調節系の存在を明らかにした。さらに、5/6腎摘ラットに高リン食を与え、3週間飼育後、高リンモデル動物を作製した。血中各種パラメーターを測定し、腎機能を検査した。さらに、アデニン投与による腎不全モデルを作製し、高リンモデル動物を作製した。これらの動物にFGF23を投与することにより、高リン血症の病態が改善された。その理由を明らかにする目的で、小腸リン輸送活性およびリン低下作用機構を検討した。高リンモデル動物に組み換えFGF23,MEPEを投与し、その後小腸を摘出し、リン吸収能を測定した。その結果、FGF23は小腸リン吸収阻害活性を有し、リン輸送担体Type IIb Na/Pi cotransporterを阻害していることが確認された。
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