研究概要 |
現行の間欠的血液透析の限界を克服し、多くの合併症の発症を未然に防止するために、(1)持続濾過に(2)尿細管機能を付加する治療法を目指した。既に1日10リットル(L)の持続濾過により、現行の血液透析や透析濾過よりも著しく血清尿素(UN)、クレアチニン(Cr)、β_2-microglobulinが低値に維持されることを確認しており、7ml/minの濾液を得て、3ml/minを廃棄し4ml/minを再生し体内に戻す人工尿細管開発のため、尿細管上皮細胞種、人工膜素材、マトリックス、成長因子、細胞播種法などの条件を検討した。そして、PVPを含有しないPolysulfone膜中空糸内面をcollagen 1でcoatingし、ブタの近位尿細管上皮細胞(LLC-PK_1)を10^8個/mlで90度毎に4回播種し、約48時間培養し(中空糸内側,外側両側に培養液を潅流させる)、膜面積に関らず中空糸内面にコンフルエントな単層を形成できることが判明した。そして、循環実験として、UN 50mg/dl、Cr 5.0mg/dlを含有させたメディウムをLLC-PK_1細胞生着中空糸内腔を潅流させ、外側へのH_2O, Na^+,グルコースの能動輸送量、UN, Crのリーク率を10日間にわたり計測した。膜面積1m^2の中空糸モジュール内面にLLC-PK_1細胞を生着させ人工尿細管で24時間に対側に輸送できるH_2O、Na^+、グルコースは、1日6Lを移送する目標の夫々67%、93%、70%であった。この実験では、対側溶液中にアルブミン(Alb)2.5g/dlが添加されたが、静水圧は加えられていない。H_2Oを目標量だけ輸送するには、膜面積1.6m^2が必要となる。LLC-PK_1細胞にratのaquaporin 1遺伝子を導入して、対側にAlb3.5mMolを加えてH_2Oの移送を測定すると、遺伝子非導入LLC-PK_1細胞のそれに比し、約2倍の移送能を示した。イヌを用いた体外循環実験を、膜面積0.2m^2の持続血液濾過器により2.6ml/mmの濾液を得て、0.4m^2の人工尿細管内腔を24時間潅流し、中空糸外側に血液濾過器を経た血液を潅流することにより1.5ml/minの濾液を再生し静脈に戻すことが出来た。今後、ヒト尿細管細胞を用いる検討に移れば、臨床応用も十分視野に入る
|