申請者らは、周産期の肺は時間因子と酸素を含めた環境因子による協調的遺伝子発現制御によって正常な発達をとげるという考えに立って、胎生末期および新生仔期のラット肺で発現量が変動する遺伝子、また、胎生末期のラット肺から分離培養した線維芽細胞を用い、酸素濃度の変化により発現量が変動する遺伝子を検索した。その結果、コラーゲン合成に関与するProlyl 4-hydroxylase、アポトーシス誘導因子Baxの阻害因子であるBax Inhibito r-1、ストレス応答型転写調節因子と考えられるATFx等が同定された 本研究では、「周産期に起こる肺の再組織化は、酸素環境変化が引き金になり、ストレス応答シグナル伝達因子群の活性化、アポトーシスによる特定細胞の消失と細胞外基質の再構成という段階を経ておこなわれる。」この仮説に基づいて、これまで申請者らが同定してきた遺伝子群の機能解明を、転写制御機構の解析、タンパク質の機能ドメインの解析、および、遺伝子ノックアウト動物の解析という分子および個体レベルから行う。 本年度は、マウスとヒトのATFxのcDNAのクローニングを行い発現ベクターを作成した。そして、抗体作成のためのタンパク質を調製した。また、ATFxと相互作用するタンパク質を酵母を用いたTwo-hybrid法を用いて検索し、ストレス応答転写調節因子のNrf-2と結合する可能性を示した。
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