本研究では、「周産期に起こる肺の再組織化は、酸素環境変化が引き金になり、ストレス応答シグナル伝達因子群の活性化、アポトーシスによる特定細胞の消失と細胞外基質の再構成という段階を経ておこなわれる。」上記仮説に基づいて、これまで申請者らが同定してきた遺伝子群の機能解明を、転写制御機構の解析、および、タンパク質の機能ドメインの解析という観点から行う。そして、周産期の肺に起こる機能転換と再組織化の分子機構を解明することを研究目的とし、以下の結果を得た。 1、マウスATFx遺伝子構造の解析およびノックアウトマウスの作製 マウスゲノムデータベースからATFx遺伝子解析し、その整合性を検討するとともに、実験的に転写の開始点、Exon、および、Intron構造を決定した。ゲノム構造を基にターゲッティングベクターを作製し組み替えを行った。 2、ペプチド抗体の作成 マウスとラットのcDNAの配列からアミノ酸配列を推定し、マウスとラットに共通でATFxに特異的なアミノ酸配列を選定し、その配列を抗原として抗体を作製した。本抗体は、マウスの臓器を試料として検討したところ、分子量25KDa、45KDaおよび65KDaに認められた。 3、ストレス応答と細胞内局在の検討 ATFxがストレス応答に関与していることを推定し、グルタミン欠乏、高酸素ストレス、および、高浸透圧ストレスを負荷し、細胞内局在の変化を検討した。その結果、ATFxは核内に局在し、グルタミン欠乏により核内に蓄積し、高浸透圧ストレス負荷により細胞質に移行することが明らかとなった。
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