研究概要 |
本研究では、「周産期に起こる肺の再組織化は、酸素環境変化が引き金になり、ストレス応答シグナル伝達因子群の活性化、アポトーシスによる特定細胞の消失と細胞外基質の再構成という段階を経ておこなわれる。」上記仮説に基づいて、これまで申請者らが同定してきた遺伝子群の機能解明を、転写制御機構の解析、および、タンパク質の機能ドメインの解析という観点から行う。そして、周産期の肺に起こる機能転換と再組織化の分子機構を解明することを研究目的とし、以下の結果を得た。 1,我々はBax inhibitor-1(BI-1)を肺の発達過程で発現量が変化する遺伝子として同定した。BI-1の発現は2種類のプロモーターにより転写が制御されていること、そして、肺発達における発現量の変化は、P2プロモータの活性変化により説明できることを明らかにした。また、細胞のアポトーシスを抑制することを示した。 2,我々は、ATF5を酸素ストレスに応答する遺伝子として同定した。肺に高濃度酸素ストレスを負荷した後に、負荷1日目から3日目にかけてピークを示すこと、また、暴露負荷除去後に速やかに低下することを明らかにした。さらに、培養細胞を用いた実験系によりATF5が、酸化的ストレス、栄養素欠乏、浸透圧ストレスなど、さまざまなストレスに応答する転写調節因子であることを明らかにした。また、ATF5はアポトーシス抑制活性があることを示した。 以上の結果から、出生時期における肺呼吸開始後の肺の再構築に、Bax Inhibitor-1およびATF5が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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