研究概要 |
1)放射線応答遺伝子群と細胞内情報伝達系についての研究成果;放射線により発現が変化する遺伝子群を検索するためにSAGE(Serial Analysis of Gene Expression)法を試みた。この方法の特徴は、細胞内の全遺伝子の発現変化について解析が可能なことである。まず、手技を確立する為に基礎的な実験として2倍体染色体をもつ線維芽細胞株であるWI-38細胞を用い、SAGE法を試みた。10,000の転写産物を解析し、細胞内で発現している1025種類の遺伝子を同定した(DNA Seqence,11,281-6,2000)。この結果より、SAGE法は、発現遺伝子の検索は可能ではあるが、低発現の遺伝子の発現変化を解析するには適さないことがわかった。さらに甲状腺細胞の特異性を調べる為に甲状腺癌細胞株を用い放射線照射後のセラミドとDAGの遊離パターンとアポトーシス誘導の関係について明らかにした(Thyroid,10,733-40,2000)。 2)遺伝子治療への基礎データ;甲状腺癌の中で最も遺伝子治療の対象である未分化癌ではp53が高頻度に欠損している。これらの癌細胞に対する基礎実験として野生型p53をアデノウイルスベクターに組み込み、p53欠損細胞でアポトーシスを誘導可能であることを明かにした(JCEM,85,4081-6,2000)。さらに遺伝子治療に用いる遺伝子の発現効率を増強する試みとして熱ショックタンパクのプロモーターを用いることにより高率に遺伝子発現を誘導可能であることを明らかにした(Human Gene Therapy 11,2453-63,2000)。
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