研究課題
基盤研究(B)
インスリンの作用機序としては、p85/p110 PI-キナーゼの活性化が糖輸送担体の細胞膜上への移動に必須であることを証明し、その下流に位置するAktの活性型変異を過剰発現させることで、インスリン同様の糖取り込み促進がおきることを見出した。そこで、Aktをbaitに用いるyeast two hybrid法によって、結合蛋白のクローニングを行った結果、AktのC端に結合する200kDaの新規蛋白(p200)を同定することに成功した。このAkt結合蛋白p200は筋肉にも豊富に発現しており、糖輸送担体の細胞内分布に重要な役割を果たしている可能性が十分に考えられる。また、インスリンの作用の発現にはIRS蛋白にPI 3-キナーゼが結合することが極めて重要なため、その反応を可視化できるシステムの構築を東京大学理学部のグループと共同で開発した。その結果、IRS-1蛋白とPI 3-キナーゼに蛍光発色の蛋白をfusionさせ、両者の蛋白が結合するとFRET反応によって蛍光が発するという画期的なシステムが構築された。このシステムは1つの細胞中のIRS蛋白とPI 3-キナーゼの結合を、intactの状態で計時的に観察することを可能にし(Nature Biotech. in press)、分析化学の分野でも大きな反響を生んでいる。一方、動物モデルを用いたインスリン抵抗性のメカニズムについても、検討を進めた。高血圧のモデル動物やangiotensin II持続注入によって、塩分感受性高血圧ではPI 3-キナーゼ活性化までのシグナル伝達が亢進するタイプのインスリン抵抗性が生じることも明らかとなった。これらは、原因の違いによって異なる分子機序でインスリン抵抗性が生じることを明白に証明したものであり、インスリン抵抗性への臨床的アプローチを考える上でも重要な知見である。
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