研究課題/領域番号 |
12470227
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
吉川 隆一 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50093406)
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研究分担者 |
古家 大祐 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (70242980)
羽田 勝計 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (60164894)
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キーワード | 糖尿病性腎症 / TGF-β / Smad / 細胞外基質 / MAPKs |
研究概要 |
糖尿病性腎症の最も重要な組織病変は糸球体メサンギウム領域における細胞外基質の過剰蓄積であり、その発症、進展にtransforming growth factor-β(TGF-β)の関与が示唆されている。本研究は、糖尿病性腎症の発症機構にその機能異常が原因と考えられるメサンギウム細胞を用いて、TGF-βの細胞外基質蛋白(fibronectin)、及び細胞外基質調節蛋白(PAI-1)発現増強作用に関与する細胞内情報伝達系を分子レベルで解析することを目的とした。培養ラットメサンギウム細胞において、TGF-βはsmad2、3、4の核内移行を時間依存性に促進し、刺激後、30分で最大効果を得た。またTGF-βはmitogen-activated protein kinases(MAPKs)の内、ERK、及びJNKのリン酸化を時間、容量依存性に亢進させ、それらの最大効果は共に刺激後10分、TGF-β濃度2.5ng/mlであった。p38MAPKのTGF-βによるリン酸化の亢進は認められず、protein kinase Aの活性化も認められなかった。以上より、TGF-βはラットメサンギウム細胞において、smads、ERK、JNKを活性化させることが明らかとなった。また、TGF-βはrat PAI-1、fibronectin mRNA発現を時間、容量依存性に増加させ、その最大効果は刺激後それぞれ1時間、及び6時間でTGF-β濃度は共に2.5ng/mlであった。次ぎにERKの活性化がTGF-βによるPAI-1及びfibronectinの遺伝子発現に如何なる影響を及ぼすかを検討した。特異的MEK阻害剤(PD98059)は容量依存性にTGF-βによるPAI-1及びfibronectin遺伝子発現を抑制し、10uM、50uMの容量でTGF-βによるPAI-1及びfibronectin遺伝子発現をそれぞれ完全に抑制した。またPD98059(50uM)はsmad2、3、4蛋白のTGF-βによる核内移行には影響を及ぼさなかった。以上の結果より、TGF-βによるPAI-1及びfibronectin遺伝子発現にはMEK-ERKカスケードの活性化が不可欠であることが示唆された。
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