研究概要 |
本計画では転写因子HNF-1α,Pax4,Pax6,Nkx6.1に焦点を当て、標的遺伝子の単離同定を行う。すなわち、膵β細胞株において上記の転写因子をテトラサイクリンのOn-Offにより、直接的または間接的に発現が誘導される遺伝子群を網羅し、この遺伝子プールから候補遺伝子を選択して転写因子と膵β細胞機能の関連を明らかにする事を目的とする。 <平成12年度の結果> テトラサイクリンの濃度調節により転写因子の発現を誘導する膵β細胞株の構築(HNF-1α(WT),HNF-1α(DN),Pax4(WT),Pax6(WT),Pax6(DN),Nkx6.1(WT)) 厳密な発現制御と高レベルなタンパク発現を可能にする発現系であるTet Expression Systemを用い、転写因子の発現を調節できる膵β細胞株の構築を行った。Tet-On/Tet-Off発現系の構築には2ラウンドの遺伝子導入、薬剤選択、スクリーニングを行う事で、"二重安定"細胞株の樹立に成功した。まず、ホスト細胞株(MIN6細胞,RINm5F細胞)にTet-OnまたはTet-Offプラスミドを遺伝子導入する。複数のG418耐性コロニーを単離し、その中から発現量が高く、低いバックグランドレベルを持つクローンを選択した。単離した細胞株は、目的遺伝子を発現する二重安定細胞株の作製に使用した。2回目の遺伝子導入では、目的遺伝子を含むpTREコンストラクト(P_<hCMV*-1>プロモーターを持つテトラサイクリン応答配列(TRE)プラスミド)を細胞株に導入した。ここでもう一度、複数の細胞株クローンのスクリーニングを行い、テトラサイクリン誘導時には高レベルで目的遺伝子を発現し、非誘導時には低いバックグランドを示すクローンを同定した。以上の操作により二重安定細胞株を樹立した。 現在は、平成12年度の目標をすでに達成しており、平成13年度の目標であるSerial Analysis of Gene Expression(SAGE)法(未知・既知にかかわらず発現しているすべての遺伝子の同定・定量が可能な方法)をすでに開始している。本研究計画は極めて順調に進んでおり、膵β細胞発生と機能における役割の解明が期待され、転写因子による膵β細胞発生、分化・増殖、さらに機能をつなぐ重要かつ特異な分子情報資源と研究基盤を提供するものとなる。
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