本計画では膵β細胞に発現する転写因子に焦点を当て、転写因子と膵β細胞機能の関連を明らかにすることを目的とする。 転写因子HNF1?は、インスリン分泌低下を特徴とするMODY(Maturity-onset diabetes of the young)3の原因遺伝子であるが、研究代表者らは、HNF1?の機能と糖尿病発症の関連を検索する目的で、HNF1?と膵β細胞に特異的に発現する糖輸送担体GLUT2の遺伝子発現への関与を検索した。GLUT2遺伝子ないしはその変異遺伝子を用いたレポーター遺伝子発現実験や結合実験によって、GLUT2遺伝子の+200から+218の配列がHNF1?による発現調節に重要であることを明らかにした。さらに、two-hybrid法や免疫沈降法を用いることによって、HNF1?の転写活性調節領域である???番から???番目のアミノ酸は、転写のco-activatorであるp300の2ヶ所(180番目から662番目及び1818番目から2079番目のアミノ酸)と相互作用し、転写活性化に繋がることを明らかにした。したがって、HNF1?は、GLUT2の5'非翻訳領域に結合し、転写のco-activatorであるp300との相互作用で、GLUT2遺伝子を活性化することが明らかになった。転写因子Pax6について、自然発症Pax6変異ラットを用い検索した結果、ヘテロ欠損マウスでは膵島における野生型Pax6蛋白の発現量がかえって増加しており、フィードバックループの存在Pax6発現量を調節していることが示唆された。また、テトラサイクリングでNkx6.1が誘導される細胞株を作製し、SAGE法を施行している。テトラサイクリンの有無で異なる遺伝子発現を同定することによって、転写因子Nkx6.1の膵β細胞における標的遺伝子が同定されるものと期待される。
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