研究概要 |
本研究は,IL-18遺伝子導入による新しい癌の免疫遺伝子治療と細胞治療の系を作成することを目的として行っている.本年度はマウス悪性黒色腫移植モデルを用いて,in vivoの治療実験を行った.まず免疫遺伝子治療に関しては,B16悪性黒色腫を皮下に移植した同系マウスの腫瘍内に,in vivo電気穿孔法を用いて,IL-12遺伝子単独,IL-18遺伝子単独,またはIL-12とIL-18遺伝子の両方を導入した.ELISAにてマウス血清中にサイトカイン濃度の上昇が認められた.EBVエピゾーマルベクターと通常のプラスミドベクターを比較すると,前者を導入した場合に,より高い発現が得られた.IL-12遺伝子導入群で有意に腫瘍増殖の抑制が認められた.IL-12とIL-18共導入群では,より著明な腫瘍の増殖抑制に加えてマウスの延命効果も得られ,これらサイトカインが相乗的に働いていることが示された.免疫学的パラメータの解析では,B16に対するCTL活性,およびNK活性の上昇が認められ,特異的および非特異的免疫応答の誘導が抗腫瘍効果を媒介していると考えられた(投稿中).一方,細胞治療の系においては,B16にカチオニックポリマーにてIL-12とIL-18遺伝子をex vivo導入した.EBVエピゾーマルベクターと通常のプラスミドベクターの比較では,前者を導入した細胞で,著明に高い発現が認められた.この細胞を放射線照射後ワクチンとして接種することにより,皮下移植腫瘍の増殖抑制と有意なマウスの寿命延長が認められた(投稿準備中).このように,免疫遺伝子治療と細胞治療の両方の系で,明らかな抗腫瘍効果が確認できた.どちらの手法も安全,有効であるのみならず,簡便で安価であるため,新しい癌の免疫遺伝子治療として臨床応用可能であると期待できる.平成13年度には,転移性腫瘍に対する治療効果を検討する予定である.
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