研究概要 |
Two cell blockがかかりにくい白系ddY系メスマウスにPMSGとhCGを投与し、同系マウスと交尾させた後、43〜48時間後に卵管を培養液で灌流し2細胞期胚を採取した。培養液には10%FCS含有α-MEMを用いた。2細胞期胚をorgan tissue culture dishのcenter wellに入れ、ヒト子宮扁平上皮癌株(SKG-II SF)が産生するembryotrophic factor(分子量90KD以上)を胚に作用させることで胚を分化させ、心拍動が観察される3胚葉胚にまで成長させることに成功した。この成長過程で出現する小型球形細胞群を分離培養し、これをヌードマウスの皮下に移植すると、3胚葉組織を形成することからこの小型球形細胞はES細胞であることの可能性が強く示唆された。そこで黒系BDF1(C57BL6×DBA/2)マウスの胚盤胞の内細胞塊に小型球形細胞を移植しキメラマウスの作製を試み、これに成功した。その結果、この小型球形細胞はES細胞であることが判明した。我々が作製したES細胞は米国Geron社の保有する特許には抵触しないため現在特許を出願中である。 次に、ES細胞をヌードマウスに移植し、成長した移植片を形態的に観察したところ、肝細胞、神経細胞、筋細胞(おそらく筋幹細胞)、胎仔性軟骨細胞等が観察された。ES細胞がin vivoで分化することが証明されたので、現在、ES細胞にNGF,EGF,VEGF,HGFをそれぞれ作用させ、in vitroで神経細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、肝実質細胞に分化するか否か実験中である。我々が樹立した16種のES細胞の内、ES-3細胞はVEGFあるいはHGFで容易に毛細血管網を形成することからこの中に血管内皮幹細胞が存在するものと推定している。
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