研究課題/領域番号 |
12470248
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
寺岡 慧 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20147383)
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研究分担者 |
馬場園 哲也 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70208718)
岩本 安彦 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (60143434)
高桑 雄一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40113740)
中島 一朗 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80198077)
唐仁原 全 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (80197847)
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キーワード | 虚血膵 / 阻血再灌流傷害 / 赤血球 / 連銭形成 / 変形能 / 酸化的ストレス / 膜荷電 / 赤血球膜脂質 |
研究概要 |
阻血再灌流時の赤血球rouleau現象の発生機序として、赤血球膜について検討した。腎不全患者、糖尿病患者では膜組成に何らかの変化が生じ、これが赤血球の変形能および集合化に影響を与え、rouleau現象を促進するのではないかと仮定し以下の検討を行った。 【1】膜荷電の変化および変形能:赤血球は、膜表面に存在する糖蛋白(グリコフォリン等)側鎖のシアル酸の陰性荷電によって静電的に相互に反発しあっているが、シアル酸量の減少およびグリコフォリンの欠失により、相互の静電反発力が減少して集合しやすくなる。Endo-β-galactosidase処理によりほぼ完全に赤血球膜表面の糖鎖を除去すると、脂質面が露出し、本来融合しない赤血球相互の融合が認められた。さらに赤血球膜表面の糖鎖に特異的に結合する様々なレクチン処理を行った後に、レーザー回折法を用いて変形能を検討したところ、赤血球の変形能の低下が観察された。以上の結果は、赤血球膜の表面荷電を担う糖鎖が赤血球のrouleau現象に関与する可能性を示唆するものと考えられる(高桑研究協力者)。 【2】膜脂質組成の変化:赤血球膜においてはホスファチジルセリン(PS)やホスファチジルエタノールアミン(PE)などのアミノリン脂質は細胞質側の脂質層に局在し、これにより脂質2重層の非対称性が維持されている。赤血球膜への酸化的ストレスによりPS、PEは膜表面に露出するが、PSと結合するFITC標識アネキシンVを用いたフローサイトメトリーによりPSの細胞表面への移行について検討した。対象は健常対照7名、慢性腎不全患者10名、糖尿病患者4名で、2ml採血してEDTA入り試験管に注入し、binding bufferにて1x106cells/mlとなるよう調整後、別のculture tubeに100μl分注して5μlのAnnexin-Vと混和して、暗所、室温にて15分間反応させた。Binding bufferを400μl滴下してFlow cytometrydeで測定、ドットプロットによる陽性細胞率(%)を比較した。陽性細胞率は健常対照者0.13±0.04(mean±SE)、慢性腎不全患者0.18±0.03、糖尿病患者0.40±0.09であり、糖尿病患者、慢性腎不全患者、健常対照者の順にPSの細胞膜表面への移行は顕著であった。糖尿病患者ではよりPSの膜表面への移行が顕著であり、PSの膜表面への移行は有核細胞がアポトーシスに陥る際に顕著に認められる所見であり、糖尿病患者における赤血球膜脂質2重層外層へのPSの移行は、糖尿病患者の赤血球がより細胞死に陥りやすいことを示唆しているものと考えられる。(寺岡研究代表者)。
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