研究課題/領域番号 |
12470251
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柳 健一 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (70239797)
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研究分担者 |
谷口 英樹 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (70292555)
高田 泰次 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (10272197)
三好 浩稔 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (70292547)
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キーワード | バイオ人工肝臓 / 充填層型リアクタ / ポリビニルホルコール樹脂多孔質体 / 肝細胞 / ブタ |
研究概要 |
[目的]劇症肝炎を始めとする重症肝不全の治療の切り札としてバイオ人工肝臓の開発が活発になされている。臨床応用が可能なバイオ人工肝臓を開発するためには、10^<10>個のオーダーの肝細胞をコンパクトなリアクタ内で培養すると共に、培養細胞の機能をin vivoと同等に維持する必要がある。研究代表者らはこれまでに、多孔質の樹脂であるpolyvinyl formal(PVF)樹脂多孔質体を細胞固定化用の担体として用いる充填層型リアクタの有用性について報告し、小規模な培養系においては肝細胞が良好な機能を発現することを示した。本研究では充填層型リアクタのスケールアップを行い、肝細胞の代謝能を評価した。 [方法]肝細胞固定化用の担体として、平均孔径が250μmのPVF樹脂を3mmに細切して用いた。担体の体積が70cm^3(内径50mm、担体2,500個)のリアクタを試作した。肝細胞はブタからコラゲナーゼ灌流法により遊離し、2.5〜4.7×10^9個の細胞を播種した。リアクタとリザーバの間で200ml/minの速度で培地を潅流し、5日間の培養を行った。リアクタの下流に酸素電極とpH電極を置き、リアクタの上流に置いた酸素加装置への通気中のガス濃度を変えることにより溶存酸素濃度を30〜40%に、pHを7.4に調節した。対照として、コラーゲンをコートしたディッシュを用いて単層培養を行った。肝細胞の代謝能の指標として、アンモニア代謝能、アルブミン分泌能を評価した。肝細胞のDNA量を測定して固定化細胞数を計算した。固定化細胞の組織像を光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡にて観察した。 [結果]担体内に固定化された肝細胞数は播種細胞数に比例して増大した。播種時にリアクタ内に留まった生細胞の74%が培養第2日にPVF樹脂内に固定化された。培養第2日のPVF樹脂内の細胞密度は2.3±0.5×10^7cells/cm^3-PVFであった。固定化細胞数は培養経過とともに減少した。一方、単位肝細胞当たりのアンモニア代謝能及びアルブミン分泌能は、培養期間を通して単層培養と同等の良好な結果を示した。 形態観察では、肝細胞は主として担体の表面付近に存在し、培養1日までにほとんどの細胞が断面で数個から数十個の凝集体を形成しているのが観察された。PAS染色では細胞質内に豊富なグリコーゲン顆粒が観察された。次に透過型電子顕微鏡による観察で、細胞質内には豊富な細胞内小器官を認め、隣り合う細胞間に密着班および毛細胆管の形成を認めた。
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