研究概要 |
ヒト大腸菌臨床検体を用いてCOX-2発現と臨床病理学的因子との関連性を検討し,大腸癌発育進展におけるサイクロオキシゲナーゼ(COX)-2の役割を明らかにしている. 1. 大腸癌肝転移巣におけるCOX-2 mRNA発現 大腸癌肝転移(HM)15例,大腸癌(CC)108例,非癌部肝組織(NH)12例,大腸粘膜(NH)98例を対象とした.RT-PCR法によりCOX-2発現を検討し,COX-2のCOX-1に対する比(COX-2 index)を算出した.HM, CC, NH, NCのCOX-2 indexはそれぞれ1.9±0.2, 1.7±0.1, 1.6±0.2, 0.9±0.1(mean±SE)で,NCは他の3群と比べ有意に低かったが,HM, CC, NHの間には差を認めなかった.肝転移を伴う大腸癌と,伴わない大腸癌のCOX-2 indexはそれぞれ2.0±0.3, 1.7±0.1であり,差を認めなかった.肝転移巣ではCOX-2 indexが原発巣および非癌部肝組織より高くなく,肝転移を伴う大腸癌と伴わない大腸癌でCOX-2 indexの有意差がないことから,大腸癌肝転移ではCOX-2発現の関与は少ないことが示唆された. 2.大腸癌におけるCOX-2 mRNA発現と深達度の関係 m癌を除く大腸癌92例を対象とした.上記と同様な方法でCOX-2 indexを求め,深達度との関係を検討した.COX-2 indexが2以上の症例を高発現群,2未満を低発現群とした.両群間で深達度に差を認めなかった.腫瘍径を大(7.5cm以上),中(4cm以上7.5cm未満),小(4cm未満)に分けて検討すると,小と中では高発現群と低発現群の間に深達度の差は認めなかったが,大では高発現群で有意に深達度が深かった.腫瘍径の大きい大腸癌では,COX-2 mRNAの発現が深達度の増大に関与している可能性が示唆された.
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