研究概要 |
1 COX-2蛋白はヒト大腸腺腫症のモデルであるAPCノックアウトマウスの腸粘膜表層の間質に誘導され、血管新生を促すことが知られているが、その担当細胞は同定されていない。今回の研究では免疫組織学的分析にて、APCノックアウトマウスのポリープ近傍の腸粘膜表層の間質でCOX-2蛋白を発現している細胞は線維芽細胞と内皮細胞であること、マクロファージや白血球にはCOX-2蛋白が発現していないことを明らかにした。(Cancer Research 62:6846-6849,2002) 2 大腸癌の発生や進展にCOX-2蛋白が関与していることが示されている。APCノックアウトマウスの実験ではポリープの発生にCOX-2蛋白が関与していることが明らかにされ、また、NSAIDsやCOX-2蛋白阻害剤が大腸癌の発生率や死亡率を低下させることが報告されている。散発性大腸腺腫95病変を対象とし、腺腫の病理組織学的所見とCOX-2蛋白の免疫染色を比較検討した。正常大腸粘膜上皮にはCOX-2蛋白は発現せず、腫瘍上皮、間質細胞に発現を認めた。COX-2蛋白の発現は単変量解析では腺腫異型度と大きさに有意な相関をみたが、多変量解析では異型度とのみに有意な相関を認めた。(Dis Colon Rectum 46:786-792,2003) 3 COX-2蛋白と腺腫異型度との相関を認めたが、さらに細胞増殖能との関係を検討した。散発性大腸腺腫95病変を対象とし、COX-2蛋白の発現なし、低発現、高発現の腺腫で比較すると、Ki67 labeling indexはそれぞれの群間で有意差があり、COX-2蛋白の発現と細胞増殖能は相関した。(Jpn J Clin Oncol 33:631-635,2003) 4 sm大腸癌48病変を対象とし、COX-2蛋白発現と発育形態、k-ras変異を検討した。COX-2蛋白発現はpolypoid発育に高く、また、k-ras変異とも相関していた。(Dis Colon Reclum 47:in press,2004) 5 家族性大腸腺腫症21例を対象としてCOX-2阻害剤の直腸腺腫に対する効果を二重盲検法にて検討した。9ケ月間の投与にて、COX-2阻害剤投与群ではプラセボ投与群よりポリープの大きさと数が有意に減少した。しかし、投与終了後3ヶ月目ではその差はなくなった。(Clin Cancer Res 315:4756-4760,2003)
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