前年度の報告にあるように、ラットでは壁ずり応力の異なる自家静脈グラフトモデルの作成は困難であるため、イヌを使用してモデルの作成を行った。低血流・低ずり応力モデルは、イヌの大腿動脈の分枝を残して本幹を結紮することにより作成した(低血流・低ずり応力群)。高血流・高ずり応力モデルは大腿動脈と大腿静脈を側々吻合することにより作成した(高血流・高ずり応力群)。モデル作成の2週後に、自家頚静脈を腸骨動脈に置換した。また、対照として付加的処置を行わず、自家頚静脈を腸骨動脈に置換を行った(対照群)。4週後に、自家静脈グラフトを摘出して、内膜肥厚について検討した。移植前の自家静脈と比較して、対照群においても内膜肥厚が観察された。一方、低血流・低ずり応力群では内膜はさらに厚く、高血流・高ずり応力群では逆に薄くなっていた。侵入または増殖細胞として血管平滑筋細胞、線維芽細胞、マクロファージが形態学的に同定された。また、抗炎症性サイトカインとしてIL-1βやTNF-α、OSMの免疫染色を行ったが、内膜に増殖した血管平滑筋細胞にそれらが染色された。現在、各種の抗P-セレクチン抗体、抗VCAM-1抗体、抗ICAM-1抗体を使用して免疫染色を行っている。 また、標本の一部を凍結して、total RNAの抽出を試みた。条件の調整は完了し、十分量のtotal RNAを抽出できるようになった。現在、各種接着分子と炎症性サイトカインのRT-PCRを計画している。
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