研究概要 |
移植臓器の拒絶反応におけるFcレセプターを介する免疫反応の関与を検討するために、免疫グロブリンFcレセプターのγサブユニットが欠損したFcRγノックアウトマウスをレシピエントとして移植実験を行った。 初年度に皮膚移植実験を行い、急性拒絶反応における抗体の関与について検討した。BALB/cマウスの耳介皮膚を、C57BL/6マウスより作製したFcRγノックアウトマウスの側背部に移植し、ワイルドタイプのレシピエントを用いたコントロール群と移植片の拒絶開始までの日数および終了までの日数について検討した。皮膚移植片の拒絶反応はノックアウトマウス群・コントロール群ともに移植後8日目に始まり、移植後21日目までに移植片が吸収され両群間に差は認められなかった。次いで,肺移植における慢性拒絶反応を反映した病態と考えられている閉塞性細気管支炎のモデルである異所性気管移植モデルを用い、同様の実験を行った.同様のドナー・レシピエントを用い,ドナー気管をレシピエントの背部に移植し,繊維性肉芽組織による気道内腔閉塞の程度を観察した.この結果,繊維性肉芽組織による気道内腔の閉塞は,ノックアウトマウス群,コントロール群で,移植後14日から21日の間に完成し,両群間には気道閉塞の程度に有意差は認められなかった. 平成13年度には,FcRレセプターを有する代表的な細胞であるマクロファージの慢性拒絶反応に対する関与を検討するために,ラット異所性気管移植モデルを用いて実験を行った.この結果,塩化ガドリニウムを用いてレシピエントマクロファージ除去を行った群においては,コントロール群に比較して,線維性肉芽組織による気道内腔閉塞が有意に抑制されることが明らかとなった.このことから,アロ免疫反応に伴い惹起される閉塞性気道病変の形成に,マクロファージが関与することが明らかとなった.
|