研究概要 |
我々は小切開で心臓に到達するMIDCABと胸骨正中切開で到達するOPCABを267例に行った.内訳は,76歳以上が51例を占め,男女比208対59で,術式はMIDCAB138例,OPCAB129例であった.うち59例(22.1%)に心房細動を認めた.そこで心房細動発生の危険因子として年齢,性別,手術時期,バイパス部位,完全血行再建,左室駆出率(35%未満),Ca拮抗剤,β遮断剤,利尿剤,糖尿病,高血圧,腎不全,術式,左主幹部病変,右病変の何れが関与するかをSPSSロジステック多変量解析法を用い検討した.その結果,心房細動の発生頻度が有意に高かったのは術前の糖尿病の合併(CR 4.844,,95%CI 2.356 9.958, p=0.00),腎不全の合併(CR 2.845, 95%CI 1.176 6.884, p=0.02)と右冠動脈へのバイパス(CR 3.540, 95% CI 1.020 12.279, P=0.046)であった.また高い傾向にあったのは,左室駆出率の低下と術前Ca拮抗剤投与であったが,他の因子は無関係であった.次いで心房細動の発生機序を解明すべく心房の心表面マッピングを試みた.しかし術前洞調律時に心房,肺静脈,大静脈に異常電位は捕らえられなかった.このマッピングは弁膜症,心房中隔欠損症に伴う心房細動には有用であり,特に,周波数解析による最大パワーの分布がmaze手術に代わる心房細動の簡易手術のためのガイドになる可能性があり注目された.またホルター心電図波形からQRS波をスブトラクションし心房細動波のみにし周波長を分析する方法を見出し,細動の停止様式につき検討しえた.
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