研究概要 |
ラットの気管支をクロム酸塩に曝露させたクロム肺癌モデルの作成 Levy et al.は1986年にラットのクロム肺癌モデルを作成しこれがヒトクロム肺癌モデルに酷似していることを報告している.今回,我々も中枢性扁平上皮癌の発生機序を解明するためにラットにクロム酸塩を曝露させクロム肺癌を発生させることを試みた.生後12週のJcl Wisterラットを用いネンブタール麻酔後,気管切開を行いクロム酸塩のペレットをKuschner et al.の手法に則って気管支腔内に留置した.クロム酸塩はクロム酸ストロンチウムとクロム酸カルシウムを使用しこれらとコレステロールを1:1の割合で混合したものを熱し融解させ,らせん状に成形した長さ5mmの鋼線でからめ取りクロム酸塩のペレットを作成した.ペレット留置後9ヶ月経過した個体を犠死させ,クロム酸塩が留置されていた部分を中心に気管支の変化を観察した. クロム酸ストロンチウムを投与されたラット8匹中,扁平上皮癌2例,carcinoma in situ 3例,扁平上皮化生1例,異形性1例,無変化1例が認められた.またクロム酸カルシウムを投与されたラット8匹中,扁平上皮癌1例,carcinoma in situ 2例,扁平上皮化生2例,異形性2例,無変化1例が認められた.今後.クロム酸塩を投与されるラットの個体数を増やし,得られた病変に対して,病理組織学的,分子生物学的検討を加えMicrosatellite InstabilityやDNA修復遺伝子発現状況等を明らかにしていく予定である.
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