研究概要 |
脳血管を標的とした髄腔内投与遺伝子治療のdrug delivery systemとして,本年度はハイドロゲル・ポリマーを用い遺伝子導入の長期持続性が得られるかを検討した.まず,ハイドロゲル・ポリマーの安全性の検討を行った.ウサギの頭部を脳定位固定装置に固定し開頭を行い手術用顕微鏡下に中大脳動脈を露出させた.中大脳動脈周囲にハイドロゲル・ポリマーを塗布し閉頭した.塗布2週,1ヶ月,3ヶ月後に脳を摘出し組織学的検索を行ったが,中大脳動脈およびその周囲のハイドロゲル・ポリマーに接していた脳に変化は認めず安全性が確認された.これをもとに遺伝子導入の検討を行った.ルシフェラーゼDNAを2μg/μlでハイドロゲル・ポリマーに無菌的に混合し,前述と同様の方法でウサギ中大脳動脈周囲に100μlを塗布した.塗布2週,1,2,3ヶ月後に脳を摘出しさらに中大脳動脈を選択的に摘出した.その一部を組織学的検索に用い,ルシフェラーゼ抗体により免疫組織学的検索を行った.組織学的には,中大脳動脈壁中に塗布2週,1ヶ月,2ヶ月後まではルシフェラーゼが確認されたが,3ヶ月後には認められなかった.残りの中大脳動脈はホモジナイズおよび溶解しルシフェラーゼ・アッセイ・システムによりルシフェラーゼ活性を測定した.塗布2週,1ヶ月後には347±142,286±162TLUと十分な遺伝子導入が認められたが,2ヶ月後には52±38,3ヶ月後には測定不能と漸次減少した.以上からハイドロゲル・ポリマーによる遺伝子導入は1〜2ヶ月までは期待できるが3ヶ月以上の持続性は得られないことが示された.
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