研究概要 |
1)我々はまず最初に、heat shock protein 70 (hsp70) promoterによりLacZ repoter geneを発現するvector (hsp70/LacZ)を作成し、それをhuman glioma cell lines (U251-MG, T98G, NP2)及びmouse 203 glioma cell lineに導入しstable transfectantを得た。その後、それぞれの遺伝子導入細胞を用いて、加温(41℃2時間、42℃1時間、43℃1時間)後3-72時間のβ-galactosidaseの発現を測定した。その結果、主に加温3-24時聞後をピークとする発現を認めたが、細胞間によりその発現程度に相違がある(U251-MG細胞では、37℃でも発現がみられる)ことがわかった。 2)そこで我々は、これらの結果をもとに、治療用遺伝子として、CD40 ligandを発現させるconstruct (hsp70/CD40L)を作成し、mouse 203 glioma cell及びhnman NP2 glioma cellに遺伝子導入し、stable transfectant (hsp70/CD40L-203及びhsp70/CD40L-NP2)を得た。その細胞を用いて、加温後のCD40 ligandの発現をELISAを用いて測定したところ、結果1)と同様、加温後3-48時間後に発現上昇を認める、という結果を得た。 3)さらに我々は、hsp70 promoterによりIFN-gammaを発現させるconstruct (hsp70/IFN-gamma)を作成した。それをin vitroで、株化細胞(mouse 203 glioma cell)にlipofection法により遺伝子導入し、stable transfectant (hsp70/IFN-gamma-203)を樹立した。この遺伝子導入細胞を用いて、42℃1時間の加温後(12,24,48,72時間後)の培養上清中IFN-gammaの発現量をELISAにより測定した。その結果INF-gammaは、加温24時間後に最も多く発現が認められることがわかった。また、negative controlとしての37℃加温では、IFN-gammaの発現は認められなかった。 4)以上まとめると、導入細胞により加温後のhsp 70 promoterの下流遺伝子の発現のパターンは異なるものの、U251-MG以外の細胞では、明らかに加温直後〜48時間後にピークをもつ発現を示した。それゆえ、これらのhsp 70 promoterを用いた遺伝子発現システムは、heat shockをswitchとしたheat-inducible gene therapyとして有用である可能性が示された。
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