研究課題/領域番号 |
12470287
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高橋 均 新潟大学, 脳研究所, 教授 (90206839)
|
研究分担者 |
田中 隆一 新潟大学, 脳研究所, 教授 (30018816)
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (80281012)
|
キーワード | 難治てんかん / 神経病理 / 遺伝子解析 / Bilateral periventricular nodular heterotopia / Migration disorder / 皮質形成異常 / 剖検例 |
研究概要 |
本年度は、Bilateral paraventricular nodular heterotopia (BPNH)の一剖検例について、その臨床病理学的解析と原因遺伝子の同定を行った。 BPNHは上衣下層の異所性灰白質結節を特徴とするmigration disorderであり臨床的に難治てんかん発作を伴う。近年、BPNHの原因遺伝子の一つ,filamin-1,が同定され、その産生蛋白(FLN1)が細胞移動や血管の発生に果たす役割が推測されている。X染色体優性の遺伝形式をとるBPNHでは、殆どの患者は女性であり、男児は胎生早期に死亡する。 症例は死亡時48歳、女性。神経疾患の家族歴は無い。動脈管開存症の既往があり14歳時に閉鎖術を受けた。16歳時に意識消失を伴う痙撃発作が出現し、以後抗痙攣剤抵抗性のてんかん発作が続いていた。病理組織学的には、異所性結節内の神経細胞の形態は大脳皮質のそれに類似しており、一方、近接する尾状核のものとは異なっていた。このことは、FLN1の異常は発生期における未分化細胞の移動をcritica1に制御する一方、神経細胞の分化・成熟には関与しない可能性が考えられた。また、結節内外には、広範に血管奇形(近接かつ平行に走る小径血管の束からなり、横断面では毛細血管様小血管が糸球状に集塊をなしている)が存在しており、大脳皮質では、この血管奇形に随伴して皮質形成異常が認められた。Carbocyanine dye (Dil)を用いて結節内及び結節外の神経線維連絡を調べたところ、複数の結節同士あるいは結節と大脳皮質との連絡が確認された。このことから、結節内外の異常な神経線維連絡がてんかん発作に関与する可能性が初めて示された。原因遺伝子検索では、filamin-1遺伝子に変異を認め、その部位はこれまで報告のないもの(exon 11におけるmissense mutation ; nucleotide 1582 : G>A[V528M])であった。本例は、遺伝子異常が確認されたはじめての剖検例である
|