研究概要 |
虚血モデル動物に於ける神経細胞死メカニズムを明らかにするために,平成12年度に引き続き,スナネズミ三分間前脳虚血モデル,脳卒中易発症高血圧自然発症ラット中大脳動脈永久閉塞モデル,視床の二次変性モデル,周産期仮死モデル等において,病変部と対照部から,それぞれRNAを抽出し,逆転写後,任意の塩基配列を持つprimerを用いてPCRを行い,Differential Displayを行い,病変部と対照部で発現程度の異なる新規遺伝子を検索した。その結果,いくつかの候補が得られたが,ノーザン法で詳細に再検討した結果,骨形成蛋白と結合能を有する機能ドメインを有する一つの新規遺伝子を得,その全長cDNA配列を決定した。In situ hybridizationによる検討では,この遺伝子はアストロサイトに限局して発現していた。中枢神経系を構築する主要な細胞の一つであるアストロサイトは、ニューロンを機械的に支持するのみならず、神経栄養因子等の種々の蛋白質性因子を産生することにより、ニューロンの分化や機能の調節に関わることが近年明らかとなりつつある。特に,虚血性脳障害・外傷性脳障害,あるいは神経変性疾患においては,その病変部において反応性のアストロサイトの増殖すなわちグリオーシスが起こることが知られている。従って,本遺伝子は虚血モデル動物に於ける神経細胞死メカニズムに密接な関係を有するものと考えられる。今後,この新規遺伝子の機能解析,発現動態の解析を進めていく予定である。
|