研究概要 |
虚血モデル動物における神経細胞死メカニズムを明らかにするために,平成13年度に得た新規遺伝子についての解析を進めた。その結果,本遺伝子にコードされる蛋白質は三つのcysteine rich domainを持ち,骨形成因子と結合する能力を有する分子であることが明らかとなった。さらに,in situ hybridization法と免疫組織化学法を用いて本蛋白の局在を調べたところ,中枢神経系全体のアストロサイトに反応が出ていたが,特に海馬歯状回や脳室下帯等の神経幹細胞が存在する領域に存在するアストロサイトに強い発現が認められた。更に,培養した神経幹細胞を用いて,神経幹細胞の分化に対する影響を検討したところ,本蛋白は,骨形成因子を阻害することにより,神経幹細胞を効果的に神経細胞に分化させることが明らかとなった。また,海馬の培養上清には神経幹細胞を神経細胞に誘導する因子が存在することが報告されているが,この活性は本蛋白に対する抗体を加えることにより消失した。このことは本蛋白が海馬の上清中に報告されている未知の蛋白である可能性を示唆している。現在,ノックアウトマウスの作成に取り組んでおり,生理機能の解析を目指している。また,スナネズミを用いた総頚動脈三分間虚血モデルにおいて,非常にゆっくりとした神経細胞死が海馬CA1領域に発生することを明かとし,またその神経細胞死がプロサボシン由来の18merペプチドの静脈内投与により抑制されることを明かとした。
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