研究概要 |
脳腫瘍の化学療法においてクロロエチールニトロソウレア系制癌剤(CENU)の選択的治療効果をあげるために,本年度はCENU抵抗性が予想されるO^6-methylguanine-DNA methyltransferase(MGMT)酵素が多いMer+腫瘍に対して,MGMT阻害剤でMGMT活性を特異的に阻害してCENU作用の増強をin vivoで検討した. MGMT活性阻害剤としてこれまで合成したグアニン誘導体O^6-arylmethylguanineのうち,in vitroでO^6-benzylguanineと同等の増強効果を有したO^6-fluorobenzylguanineに関して,Mer+脳腫瘍(C6)皮下移植実験系において1-(4-amino-2-methyl-5-pyrimidinyl)methyl-3-(2-chloroethyl)-3-nitrosourea hydrochloride(ACNU)の腫瘍増殖抑制効果の増強を試みた.O^6-fluorobenzylguanineのbenzene環3位または4位のfluorine置換化合物はACNUの腫瘍増殖抑制を増強させた.移植20日後の腫瘍体積でO^6-(4-fluorobenzyl)guanineとACNU併用で75%,O^6-(3-fluorobenzyl)guanineとACNU併用で48%抑制した.これに対して,2位に置換基を有したfluorine誘導体による増強効果は少なかった.増殖標識率はO^6-fluorobenzylguanine投与後12時間で50%程度まで低下したが,96時間後には回復し,Mer+脳腫瘍におけるO^6-fluorobenzylguanineとACNU併用プロトコールにおいては96時間後の反復または交代化学療法の必要が示された.
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