研究概要 |
我々はこれまで脳動脈瘤が破裂に至るには異なる複数の過程が考えられることを明らかにしてきた.一方,脳動脈瘤発生には血行力学的ストレスと誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)由来の一酸化窒素(NO)が関与することが明らかになっている.脳動脈瘤壁の脆弱化とそれに引き続く破裂にiNOSが関与しうるかを検討してみた.さらに脳動脈瘤の疫学を検討し,脳動脈瘤が破裂するメカニズムについて検討を加えた.未破裂動脈瘤および破裂動脈瘤の70%ではiNOSの発現を認めることはできなかった.破裂動脈瘤の一部および頸動脈動脈硬化病変ではマクロファージにiNOSが発現していると考えられた.脳動脈瘤発生にはiNOS由来のNOの関与が明らかになっている.臨床例での破裂脳動脈瘤壁に一部ではあるがiNOSの発現も認められ,動脈瘤破裂にiNOS由来のNOが関与しうる可能性が明らかとなった. 脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の頻度は加齢により上昇する.50歳以下ではくも膜下出血の頻度の性差は認めないが,男性では50歳以降はほぼ一定となる.女性では50歳以降も加齢によるくも膜下出血の発症率は上昇を示し,70歳代女性では男性の2倍まで増加する.一方,未破裂脳動脈瘤の頻度は男女ともに加齢により増加する.女性の未破裂脳動脈瘤の頻度は常に男性を上回っている.男性では50歳以降に未破裂動脈瘤は発見され始め,加齢とともに上昇する.しかし,60歳代以降はその頻度はあまり変化しない.女性では男性と異なり70歳以上になると急激に未破裂動脈瘤の頻度は上昇する.脳動脈瘤は加齢に伴い発生している.脳動脈瘤発生後一部は,比較的早期に破裂する.破裂を免れたものは脆弱な動脈瘤構造が修復されいわゆる未破裂動脈瘤となる.
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